番外編 ふうたお童話 赤い魚

            すこし すこし昔

  空がたくさん見える お庭のあるお屋敷がありました

 

そのお屋敷のご主人は魚が好きで

数本の水槽を持っていました

 

その水槽の一つに

赤い頭で白い魚のラミーノーズと

オレンジ色に黒のラインのラスボラが

綺麗な群で泳いでいました

 

柔らかい緑の水草と龍のような形の流木

白い群れとオレンジの群れが

時折交ざりながらゆったりとラインを作っていました

 

ある日  お屋敷のご主人が新しい仲間を

酸素で膨らませたビニール袋に入れて連れてきました

 

プラチナアカヒレ  

オレンジより濃い朱色に近い色で

何よりヒレの先っぽに

光る緑の小さい斑点がついていて

水槽の照明で夜光塗料のように光るのでした

 

わたしはとくべつよ

うつくしいすがたをみて

すてきないろでしょう

いっぴきでじゅうぶんきれいよ

 

 

プラチナアカヒレ達はそれぞれバラバラに

好きな方に泳ぎ回り

水槽の上層部を占領していました

 

水槽をみる時間が心の癒しのご主人は

後悔し始めました

 

アカヒレのせいで水槽のまとまった雰囲気が無くなってしまった

 

どうしよう

 

網で掬ってしまおうか

 

 

次の日    プラチナアカヒレは  

お庭の池に捨てられました

 

ラミーノーズとラスボラの水槽は

また綺麗な群泳だけになりました

 

                    おしまい