一話 の1 日菜子の場合
「疲れちゃったな」
従業員割引で買ったコロッケとキャベツ、
牛乳が入ったレジ袋を
自転車のカゴに入れながら日菜子は呟いた。
今日の美美のお迎えは実家の母に頼んである。
少し寄り道してみようかと思ったら
急に気分が良くなった。
「しまった、牛乳買わなきゃ良かった。
一時間ぐらいなら腐らないわよね。」
もう5時半ぐらいなのだがまだ明るい。
少しずつ日が長くなってきてるのも
寄り道の気分を上げた。
線路沿いの道を
自宅と逆の方角に。
夕方の空に青とオレンジを混ぜた色が広がって行くのを
何年かぶりの立ちこぎで追いかける。
目的地は 駅のアーケード街の中
扉だけの入り口
入るのに 少し度胸がいる様な
そんな場所
続く