滝枝の場合 その1
占い〼
緑色の扉のその店は
アーケード街の真ん中辺りにある。
隣は薬屋と花屋で、建物はほとんど隙間なく、ひっついている。
火事が起きたら、きっと全部焼けてしまうのだろう。
間口は狭いが奥が深い、いわゆる 鰻の寝床と呼ばれる家屋である。
裏側も立て込んでいて、
どうやってこんなにひっついて建てることができたのかわからない。
薬屋の裏手には お地蔵様があって、水仙が供えてある。
お地蔵様の前を通る細い抜け道を行くと
薬屋の庭が見える。その庭にある小さい温室の後ろの
薄っぺらい壁に片開きの小さい門扉がつけてある
ふうたお
表札の代わりのような木の板に書かれている。
店の名だ。
ふうたおの裏口は滅多に開かない。
鍵が掛けられているわけではないが。
つづく